「うちの子だけ逆上がりができない」——そんな心配を口にする保護者の方は少なくありません。ですが、できないことは運動能力が低いことを意味しません。逆上がりは、いくつかの体の動きが同時にそろって初めて成立する、かなり複雑な技だからです。この記事では、相模原で体操教室を運営するNPO法人スエニョデポルテス/ヴェルディ相模原が、できない理由を「腕の力」ではなく「体の使い方」から整理し、家や公園でできる練習を3つご紹介します。

逆上がりは「力が足りない」から失敗するのではない

大人はよく「腕の力をつけよう」と言います。もちろん力があるに越したことはありませんが、現場では、腕相撲の強い子が逆上がりに苦戦し、小柄な子がすっと回ってしまう場面がよくあります。力の大小だけでは説明がつかないのです。

逆上がりは、体を鉄棒に近づけたまま脚を振り上げ、その勢いで回転する動きです。大事なのは「体と鉄棒の距離」と「力を出す方向」。この2つがずれていると、どれだけ力を込めても体は上がりません。

つまずきやすい4つのポイント

1. あごと鉄棒が離れてしまう

もっとも多いのがこれです。鉄棒をにぎった瞬間、腕が伸びて体が棒から離れてしまう。すると回転の中心から体が遠ざかり、自分の体重を持ち上げる距離が長くなります。おなかを鉄棒に引き寄せ、あごが鉄棒の近くにある状態をつくれると、同じ力でもぐっと回りやすくなります。

2. 腕がピンと伸びきってしまう

1と表裏一体です。ひじが伸びきると、体は鉄棒からぶら下がるだけの姿勢になります。ひじを軽く曲げて「引きつけた」まま維持できるかが分かれ目です。筋力も関係しますが、多くは「曲げ続ける感覚を知らない」ことが原因で、感覚は練習で身につきます。

3. 脚を前に振ってしまう

逆上がりでは、脚を「後ろから上、そして頭の向こう側」へ振り上げます。ところが、うまくいかない子の多くは脚が前や横に流れています。本人は上げているつもりでも、方向が違うだけ。「空を蹴る」といった言葉で方向のイメージを渡すと、変化が出ることがあります。

4. 地面の蹴り方が弱い、またはタイミングが合わない

踏み切りの足で地面を蹴る勢いは、回転のきっかけになります。ただし早すぎたり遅すぎたりすると、せっかくの勢いが回転に変わりません。腕で引きつけながら同時に蹴る、というタイミングの一致が必要です。頭で理解するより、繰り返して体で覚える部分が大きい動きです。

このように、逆上がりは複数の要素が重なる技です。どれか1つ欠けるだけで回れません。「できない」のではなく「まだそろっていない」だけ、と考えてあげてください。

家や公園でできる3つの練習

練習1:ふとんタッチ(器具なし・室内でできます)

脚を頭の向こう側へ振り上げる感覚をつかむ練習です。布団やマットの上で行ってください。

  • あお向けに寝て、手は体の横に置きます
  • 両脚をそろえて、ゆっくり頭のほうへ持ち上げます
  • 頭の先の床に、つま先が触れるところまで運びます
  • ゆっくり戻します。5回ほどで十分です

つま先が床に届かなくても構いません。「脚は前ではなく頭の向こうへ」という方向のイメージが目的です。首に負担を感じたら、その日はやめておきましょう。

練習2:タオル引きつけ(器具なし・親子で)

ひじを曲げたまま体を引き寄せる感覚を育てる練習です。

  • 大人がタオルの端を両手で持ち、子どもがもう一方の端をにぎります
  • 子どもは軽くひざを曲げ、後ろに体重を預けます
  • ひじを曲げて、自分の体を大人のほうへ引き寄せます
  • その姿勢のまま3秒キープ。これを3回ほど

大人は引っ張らず、支えるだけにしてください。「ひじを曲げ続ける」感覚が、鉄棒の動きにつながります。

練習3:おなかつけぶら下がり(公園の低い鉄棒で)

公園に鉄棒があれば、回らずにこれだけを行います。おへその高さくらいの低い鉄棒が向いています。

  • 鉄棒を上からにぎり、おなかを鉄棒に軽く当てます
  • ひじを曲げたまま、おなかを鉄棒から離さずに5秒キープ
  • 慣れたら、片足で地面を軽く蹴りながら同じ姿勢を保ちます
  • 3回ほどで終わりにします

回ることは目標にしません。「体と鉄棒が近い状態」を覚えるのが目的です。鉄棒の下がかたい地面のときは、無理をせず短時間で切り上げてください。

焦らないことが、いちばんの近道かもしれません

体の成長のペースは一人ひとり違います。今日できなくても、半年後にあっさりできることは珍しくありません。むしろ、焦って毎日練習させた結果、鉄棒そのものが嫌いになってしまうほうが、長い目で見て残念だと私たちは考えています。

「昨日より鉄棒に近づけたね」「脚が高く上がったね」——回れたかどうかではなく、動きの変化をほめてあげてください。子どもは、できるようになった瞬間より、認めてもらえた瞬間にやる気を育てます。

指導するのは野本佳輝コーチです

とはいえ、家庭での練習には限界もあります。自分の体がどう動いているかは、自分では見えないからです。NPO法人スエニョデポルテス/ヴェルディ相模原では、2027年4月の開講に向けて体操教室を準備しています。

指導するのは野本佳輝コーチです。体操指導歴14年、高等学校教諭一種免許状(保健体育)を持ち、元ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのアクロバットパフォーマー、TV『世界の果てまでイッテQ!』でのアクロバット指導、東京・埼玉・神奈川の9園で正課体育指導を担当しています。運動が得意な子も、そうでない子も、その子のいまの体に合わせて声をかけます。

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